今週に刊行される『現代思想』の特集『現代思想の316冊 ブックガイド2018』青土社に寄稿したので、宣伝のエントリーをしたい。
この特集は、若い読者をターゲットとしたブックガイド。哲学、人類学、社会学から、精神医学まで、まあ、言ってみれば、思想寄りのブックガイドとなっている。理学系分野は、統計学、数学、生物学の3分野だ。そして、なんと! ぼくは数学分野のブックガイドをを書いている。
経済学じゃないんだな。経済学者なのに、経済学じゃないんだな。笑。経済学は別の人(塚本恭章さん)が執筆している。数学なんだな、数学者じゃないのに。笑。ちょっと残念でもあり、ちょっと誇らしくもある。
今回の執筆はかなり難しかった。編集者のご要望は、「今日的な状況と、入門〜応用向けの必読書」ということで、教科書ではなく、お話本でもない本を紹介しなくてはならない。いったいどうしたものか、と途方に暮れた。
それで思いついたのが、おおまかには4つの分類をして紹介をすればいいんじゃないか、ということ。次の4分類だ。
(1) どんな数学を勉強するのにも、どんな数理科学を勉強するにも、知っておくべき基礎→微積分、線形代数
(2) 現代の数学の問題意識とシンクロするために知っておくべき分野→ミレニアム問題
(3) 最先端の数学をつまみ食いするための道具→群とガロア理論、トポロジー、数論
(4) 「数学とは何か」を哲学的に鳥瞰するためのMRI装置→数理論理学、数学基礎論
このような分類から、以下のような本を紹介・推薦した。(自著も2冊入ってますが、ご愛嬌ということで。だって、他に良書がないんだもん)。
(1) 微積分、線形代数
微積分→堀川穎二『新しい解析入門コース』(日本評論社)
線形代数→小島寛之『ゼロから学ぶ線形代数』(講談社)
(2) ミレニアム問題
リーマン予想→黒川信重『リーマン予想の探求』(技術評論社)
バーチ・スィンナートン=ダイヤー予想(BSD予想)→Chahal『数論講義 数と楕円曲線』(織田進・訳、共立出版)
P≠NP問題→野崎昭弘『「P≠NP」問題』(講談社ブルーバックス)
(3) 群とガロア理論、トポロジー、数論
群とガロア理論→
(i)P・デュピュイ『ガロアとガロア理論』(東京図書)のおまけとしてついている、第2部の辻雄『ガロア理論とその後の現代数学』
(ii)久賀道郎『ガロアの夢〜群論と微分方程式』(日本評論社)
トポロジー→瀬山士郎『トポロジー・柔らかい幾何学』日本評論社
数論→加藤和也・黒川信重・斉藤毅『数論 1・2』(岩波書店)
(4) 数理論理学、数学基礎論
数理論理学・数学基礎論→
(i)前原昭二『記号論理学入門』(日本評論社)
(ii)小島寛之『証明と論理に強くなる』(技術評論社)
これらの分野がなんであるか、なぜこれらの分野を選らんだのか、どうしてこれらの本を推薦するのか、については、『現代思想』の特集『現代思想の316冊 ブックガイド2018』青土社のぼくの文章で読んでほしい。