ぼくの新著『暗号通貨の経済学 21世紀の貨幣論』講談社メチエが、大手書店には並び、アマゾンにも入荷されたようなので、販促の追い打ちをかけたい。

- 作者:小島寛之
- 出版社/メーカー:講談社
- 発売日: 2019/01/12
- メディア:単行本(ソフトカバー)
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『暗号通貨の経済学 21世紀の貨幣論』のあとがき
本書は、ビットコインを始めとする暗号通貨について、総合解説を試みた本です。暗号通貨は今、非常にホットなトピックなので、集中的にリサーチし多方面から考察できたのは良い経験になりました。
暗号通貨というアイテムは、筆者にとって、このうえなく興味深い素材でした。なぜなら、次のような様相を持っているからです。
(a) 数理暗号というツールを使うので、純粋数学と接点を持つ
(b) 貨幣である、という点で、経済学と接点を持つ
(c) ブロックチェーンという技術によって可能となる、という点で、ゲーム理論と親和性がある
(d) プログラム可能という意味で、数学基礎論(数理論理学)と関係を持つ
(e) オープンソースと関係するという意味で、「どういう社会が望ましいか」という社会選択の問題と抵触する
(f) アルゴトレーディングに応用できる、という意味で、数理ファイナンスと関係する
これらはみな、筆者の大好物でした。これまで筆者は、RSA暗号、楕円曲線の数学、貨幣論、ゲーム理論、数学基礎論、金融トレーディングについて、それぞれ別個に書籍化してきました。今回は、これらの素材すべてを暗号通貨という一本の剣で貫く、という作業となり、大変ではあったものの、とても楽しい仕事でした。
ぼくは、ビットコインのことを知ったときは、「へえ、そんな面白いものが提示されたんだ」ぐらいにしか考えていなかった。収容所ではタバコがお金の代わりになるぐらいだから、ネット上の2進法の数字がお金になったって不思議ではない。そんな程度の興味だった。
でも、本書の執筆依頼を受けてから、ナカモトの論文を読んだり、ネット上の解説を読んだりしたら、これがひどく面白かった。上記の「あとがき」に書いたように、ぼくの好物のフルコースというか、食べ放題というか、そういうものだったのだ。なので、資料漁りも、執筆もめちゃくちゃ楽しい仕事だった。そんなぼくのウキウキ感が、本全体にみなぎっていると思う。
是非、書店で手に取ってみてほしい。