久しぶりの、そして、今年初めてのエントリー。このブログには、月に最低2回はエントリーをしたいと思ってるんだけど、1月は期末試験やらセンター試験やらでなかなか余裕がなかった。まだ、期末試験の採点の最中だけど、やっとエントリーする時間ができた。今年もできる限り、近況をエントリーしたいと思うので、ご愛読のほどよろしく。
もう原稿の校正も済んだし、出版社からの告知もなされてるみたいだから書いてしまってもいいと思うんだけど、『現代思想』青土社の増刊号で、数学者リーマンの特集号が2月に刊行される予定だ。今年は、リーマン没後150年、生誕190年という年にあたり、その記念の特集である。記事の一つとして、年末に黒川信重先生と加藤文元先生とぼくとで、リーマンについての鼎談を行った。黒川先生は、いうまでもなく、リーマン予想の専門家として、加藤先生は代数幾何の専門家として、それぞれの立場からのリーマン観を語ってくださった。リーマンについて門外漢であるぼくとしては、非常に楽しく、また、ためになるお話を伺うことができて、クリスマスシーズンに幸せな気分に浸ることができた。前回、このブログの続・続・堀川先生とキングクリムゾンの頃 - hiroyukikojimaの日記というエントリーで、リーマン面の勉強をしている話を書いたけど、実は、この鼎談のための予習だったのだ。
ちなみに、黒川先生のリーマン予想についての新著『絶対ゼータ関数論』岩波書店が、来週あたりに刊行されるらしい。また、加藤先生には、リーマン面の発展分野としての仕事として、次の本がある。
- 作者: 加藤文元
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/01/30
- メディア: 単行本
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この本は、ぼくの鼎談のために購入して、チャレンジしてみたけど、全く歯が立たなかった。でも、鼎談の中でずうずうしく質問してみたら、非常にわかりやすく説明してくださり、「そういう研究なのか」という外観は理解することができた。詳しくは、増刊号を読んでいただきたい。
実は、『現代思想』増刊号の刊行日である2月19日に、黒川先生と加藤先生の書店でのトークショーが予定されている。ぼくは、大学の業務があって、それは何時に終わるかわからないため参加表明をできないのだけど、間に合えば駆けつけて飛び入りするつもりである。予定がはっきりしたら、このブログで告知する。
関係ないようで、少し関係のある与太話を一つ。
昨年の12月24日の深夜にNHK総合で「世界入りにくい居酒屋 イギリス エジンバラ」という番組をやっていたので、なんとなく、つれあいと見ていた。番組ではスコットランドのエジンバラのパブが取材されていた。見てしまった理由は、スコッチとかアイラとかのウイスキーが紹介されており、アイラ好きのぼくとしては興味津々だったのが一つ。もう一つは、ナレーターが元AKBの篠田麻里子さんで、ぼくは彼女の熱狂的なファンであったことだった。
その番組では、面白いことに、パブにエジンバラ大学の4人の数学者(か数理物理学者)が居合わせた。そこで、スタッフがインタビューした。専門は、代数幾何とか非可換幾何とか言ってた。撮影スタッフが日本人だとわかると、一人の数学者が「日本で一番有名な数学者は」とスタッフに質問した。スタッフが「わかりません」と答えると、彼は三人の名前を挙げた。テロップには、「森毅、広中平祐、志村五郎」と翻訳が表示された。(ぼくは、まじめに見てたわけではないので、英語は聞き取らなかった)。そして、「日本は数学が強いよね」と彼は言った。
そのとき、ぼくは何かの違和感を感じたのだけど、そのときは自分の中で違和感の正体が明確にはならなかった。数日たった頃に、違和感の正体がわかった。それは「なぜ、森毅なんだ?」というものだった。もちろん、森毅さんも、数学者ではあるし、日本では有名だし、名前が挙がってもいけないわけではない。でも、あとの二人が、広中平祐と志村五郎だということ、それから、その数学者が代数幾何とか非可換幾何の専門家だということを考え合わせると、やはり違和感が否めない。第一は、広中平祐と志村五郎が海外で著名なことは明らかなこと、前者はフィールズ賞受賞者だし、後者はフェルマー予想の解決に貢献した谷山・志村予想に名を刻む数学者だ。そして、第二は、二人とも代数幾何、数論幾何の専門家であること。そう考えると、「森毅」のトッピングというのは、なんか奇妙な感じがしたのだ。それで、「ひょっとしたら、森毅ではなく、森重文と言ったのではないのか?」という閃きがやってきた。森重文さんなら、フィールズ賞受賞者だし、代数幾何の学者だから。
そんなことをつれあいに話したら、数学者ファンのつれあいは、なんと! NHKにメールで「あの場面では、その数学者は英語でなんと言っているのか」という質問を出してしまった。そうしたら、さすがNHK。三日ほどで返事をくれたとのこと(こういうサービスがあるなら、受信料の払い甲斐があるというものだ)。返答は、「We have Mori and just have Hironaka and Shimura as well」と言っている、とのことだった。ほ〜ら、名字しか言ってない。フルネームにしたのは、きっとスタッフなのだ。そして、ググったかなんかして、「森毅」だと思ったのだろう。もちろん、放映されていない場面で、その数学者にフルネームで訊ねた可能性もないではない。でも、非常に高確率で、彼が言ったのは「森重文」なのだと思う。
まあ、だからなんだってことはないんだけど、ちょっと面白い一件だったので、書いてみたってことっすね。